医療現場では、CTやMRIなどの画像データを扱う機会が増えています。データ量が膨大になるほど管理が難しくなり、セキュリティ面にも注意が必要です。情報漏えいやシステム障害を防ぐには、仕組みづくりが欠かせません。ここでは、医療画像データを安全かつ効率的に管理するためのポイントを紹介します。
医療画像データ管理の基本と課題
医療画像データは診断や治療に欠かせない重要な情報ですが、その管理には多くの課題があります。扱うデータ量が大きく、個人情報を含むため慎重な取り扱いが求められます。
データ量の増加と管理負担の拡大
CTやMRIなどの高精細画像が普及したことで、医療機関が扱うデータ量は年々増えています。1件あたりの画像容量が大きく、検査件数が多い病院ではサーバー容量がすぐに逼迫します。
バックアップや保存先の確保、定期的な更新が必要になるため、管理にかかる手間やコストも増えています。古いデータを削除する際にも法的な保存期間を考慮する必要があり、専門知識をもつ人材の関与が欠かせません。
個人情報を扱うリスク
医療画像データには患者の氏名やID、検査日時などの個人情報が含まれています。外部に漏れれば重大な情報漏えい事件につながり、信頼の失墜や法的トラブルを招くおそれがあります。
USBメモリや外付けハードディスクに保存するなどの旧来の方法は、紛失リスクが高く推奨されません。データは暗号化し、アクセス権を細かく設定して管理することが求められます。
複数システムの連携による複雑化
多くの医療機関では、電子カルテ、PACS(医用画像管理システム)、RIS(放射線情報システム)など複数のシステムを併用しています。
それぞれのデータが連動していないと、確認作業に時間がかかり、ミスの原因にもなります。システム間の連携を強化し、画像データを一元管理できる仕組みを整えることが重要です。
セキュリティを高めるための管理対策
医療画像データを扱ううえで最も重視すべきはセキュリティ対策です。患者情報を守るだけでなく、院内の業務を止めない仕組みを整えることが求められます。
アクセス権限の管理とログの記録
医療従事者ごとにアクセス権限を設定し、必要な範囲だけ閲覧・操作を可能にすることが基本です。誰がいつどのデータを閲覧したかを記録するログ管理を行えば、不正利用や誤操作の防止につながります。
退職者や異動者のアカウントを放置するケースも多いため、定期的な確認が欠かせません。小規模クリニックでも運用ルールを明確にし、全スタッフが理解している状態を保つことが大切です。
通信や保存時の暗号化
ネットワークを介して画像データを送受信する場合、通信経路の暗号化は必須です。SSL/TLSやVPNなどの安全な通信方式を導入し、外部からの不正アクセスを防ぎます。
また、保存時にもAESなどの暗号化技術を用いることで、データが漏えいしても内容を読み取られにくくなります。サーバーやクラウドに保存する際は、セキュリティ認証を取得した業者を選ぶこともポイントです。
ランサムウェアや不正アクセスへの備え
近年では、医療機関を狙ったサイバー攻撃が増加しています。ランサムウェアによるデータの暗号化被害や不正アクセスによる情報流出が起きるケースもあります。
対策としては、ウイルス対策ソフトの導入、定期的なソフトウェア更新、バックアップの自動化が挙げられます。バックアップは複数の場所に保管し、ネットワークから隔離したオフライン環境を用意するとより安全です。
効率的なデータ運用で業務をスムーズに
医療画像のデータ管理では、安全性と同時に効率性も重視されます。業務負担を減らし、診療の質を高めるには運用面での工夫が必要です。
クラウドシステムの活用
近年では、クラウドを利用した医用画像管理が広く導入されています。クラウド環境ならサーバーの設置スペースが不要で、データ容量の拡張も容易です。インターネット環境があれば、院外からでも安全にアクセスできる点も利点です。
とくに複数拠点をもつ医療法人では、拠点間で画像を共有しやすくなります。災害時にもデータを失わず、事業継続性の確保にもつながります。
AIを活用したデータ検索と分類
画像データが増えると、過去データの検索に時間がかかることがあります。AIを活用したシステムでは、自動でタグ付けや分類を行い、必要なデータをすぐに呼び出せる仕組みを構築できます。
読影医が必要な情報にすばやくアクセスできれば、診断スピードが上がり、患者対応の質も向上します。AIは異常検知や画質補正にも応用されており、診断精度の向上にも期待できます。
運用ルールと教育の徹底
どんなにシステムを整えても、運用が不十分では意味がありません。データ管理ルールを明文化し、全スタッフが同じ手順で運用できるようにします。
新人教育の段階からセキュリティ意識を育て、定期的な研修を行うことも有効です。小さなミスが情報漏えいにつながることを理解し、全員が責任をもって管理する姿勢が求められます。
まとめ
医療画像のデータ管理には、セキュリティと効率性の両立が欠かせません。データ量の増加やサイバー攻撃のリスクが高まるなか、暗号化やアクセス制限、バックアップ体制の強化は必須です。また、クラウドの活用やAIによる自動分類など、新しい技術を取り入れることで業務の効率化が期待できます。大切なのは、システムを導入するだけでなく、スタッフ全員がルールを理解し、正しく運用することです。さらに、専門的な知識をもつ企業に業務の一部を委託するのもひとつの方法です。とくに、画像データの読影や共有を専門に行う遠隔画像診断サービスを利用すれば、安全性を確保しながら業務を効率化できます。専門家のサポートを受けることで、医療の質を保ちながら負担を減らすことができるでしょう。